内館牧子著『終わった人』を読んで、定年後の人生について改めて深く考えさせられた。
本作は、大手銀行でエリートコースを歩んできた主人公が、子会社の執行役員へ転籍し、その後、定年退職を迎えるところから始まる。いわば「順風満帆」に見えたキャリアの先に待っていたのは、肩書きも役割も失った“空白の時間”だった。
物語は「定年後をどう生きるか」という普遍的なテーマを軸に進んでいくが、その展開はいい意味で予想を裏切る。時にコミカルで、時に苦々しく、そしてどこかリアル。ページ数の多さを感じさせないほど引き込まれ、最後まで一気に読み切ってしまった。
読んで考えたこと
この本を通して、いくつかの問いが自分の中に浮かび上がってきた。
■ 定年退職後、自分は何をして過ごすのか?
仕事中心の生活を送っていると、「仕事がなくなった後の自分」を想像する機会は意外と少ない。しかし本作の主人公の姿を見ていると、その準備をしていないことの怖さがじわじわと伝わってくる。
例えば、仕事以外の趣味やコミュニティがなければ、時間を持て余し、自己肯定感を失ってしまう可能性もある。逆に言えば、現役のうちから「仕事以外の軸」を持っておくことが、老後の充実度を大きく左右するのだと感じた。
■ 会社の看板なしで、自分は何ができるのか?
会社に所属していると、自分の実力以上に「会社のブランド」に支えられている部分がある。名刺一枚で信用を得られる環境は、実はとても特殊だ。
しかし、定年後はその看板が外れる。そうなったとき、「自分個人として何ができるのか?」という問いに答えられるだろうか。
例えば、副業や個人活動を通じて、自分のスキルを外の世界で試してみることは、この問いに対する一つの準備になる。会社の外でも通用する経験を積んでおくことの重要性を実感した。
■ 自分はどれだけ会社に依存しているのか?
毎日の生活リズム、人間関係、社会とのつながり——その多くを会社に依存していることに気づかされる。
主人公もまた、会社という「居場所」を失ったことで、自分の存在意義を見失いかける。これは決して他人事ではない。
例えば、会社の同僚としか付き合いがない状態だと、退職と同時に人間関係が一気に希薄になる可能性がある。そうならないためにも、社外のつながりを意識的に作っておく必要があると感じた。
■ 未経験のことに挑戦する際、才能の有無を気にしすぎていないか?
年齢を重ねるほど、「失敗したくない」という気持ちが強くなり、新しいことに挑戦するハードルが上がる。
しかし本作では、「やってみなければわからない」という当たり前の事実を突きつけられる。才能の有無を判断する前に、まずは行動することの大切さを改めて考えさせられた。
例えば、趣味でも副業でも、小さく始めてみることで新しい可能性が見えてくるかもしれない。「向いているかどうか」は、やってから考えればいいのだ。
■ 定年後に付き合える友人との絆はどれくらいあるか?
今回、特に強く印象に残ったのがこの点だった。
仕事上の付き合いではなく、「利害関係のない関係性」をどれだけ築けているか。これは、定年後の幸福度に直結する要素だと感じた。
例えば、共通の趣味を通じてつながった友人や、長年の信頼関係を築いてきた仲間がいれば、退職後も豊かな時間を過ごせるだろう。
逆に言えば、そうした関係性は一朝一夕では築けない。現役のうちから意識して人との関係を育てていくことが大切なのだと思う。
まとめ
『終わった人』は、単なる定年後の物語ではなく、「今をどう生きるか」を問い直してくれる一冊だった。
定年はゴールではなく、その先の人生のスタートでもある。そのときに後悔しないために、今からできることは意外と多い。
・仕事以外の軸を持つ
・会社に依存しすぎない
・新しいことに挑戦する
・長く続く人間関係を育てる
こうした積み重ねが、将来の自分を支えるのだと感じた。
読み終えたあと、自分のこれからの生き方を静かに見つめ直したくなる——そんな一冊だった。
フリーダム
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